チャイコフスキー Pyotr Ilyich Tchaikovsky(1840-1893)
子守歌 Lullaby Op. 16, No. 1 (1872) text by A.N. Maykov
Ljuba Kazarnovskaya, sopranoLjuba Orefenova, piano
Spí, ditjá majó, spí, usní! spí, usní! |
お眠り、赤ちゃん、おやすみよ、お眠り、おやすみよ! |
Slátkij són k sebé maní: |
心地よい眠りよ来ておくれ |
V nján'ki ja tebé vzjalá |
ばあやが三人見守ってる |
Véter, sóntse i arlá. |
風と太陽と鷲が |
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Uletél arjól damój; |
鷲はお家に飛んでいき |
Sóntse skrýlas' nad vadój; |
太陽は水の向こうに隠れ |
Véter, posle trjókh nachéj, |
風は三晩の後に |
Mchítsa k máteri svajéj. |
いそいで母のもとに帰る |
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Sprashyvala vetra mát: |
風の母親は風に尋ねた |
"Gdé izvolil prapadát'? |
「今までどこに隠れていたの |
Ali zvjózdy vajevál? |
星とけんかしてたの |
Ali vólny fsjo ganjál?” |
それとも波の背中を押してたの」 |
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”Ne ganjal ja voln marskikh, |
「波の背中を押していないし |
Zvjóst ne trógal zalatýkh; |
金色の星に触っていない |
Ja ditjá aberegál, |
赤ちゃんを守っていたのさ |
Kalybélachku kachál!” |
小さなゆりかご揺らしてたんだ」 |
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Spí, ditjá majó, spí, usní! spí, usní! |
お眠り、赤ちゃん、おやすみよ、お眠り、おやすみよ! |
Slátkij són k sebjé maní: |
心地よい眠りよ来ておくれ |
V nján’ki ja tebé vzjalá |
ばあやが三人見守ってる |
Véter, sóntse i arlá. |
風と太陽と鷲が |
(Tchaikovsky Complete Songs / R.D. Sylvester に掲載のロシア語ローマ字表記と英訳から)
チャイコフスキーの子守歌を聴く。チャイコフスキーの歌は短調で寂しげな曲が多い。この子守歌も物悲しい。
英語訳から日本語にしてみたのだが、子供に歌ってやるのだからとやさしい言葉にしてみる。
どうもメロディーが格調高くて歌詞と合わない。子供に歌いかける歌として作られたのではなくて、コンサートで歌われる歌として作られたような気がする。
同時期に作られたムソルグスキーの子守歌、「眠れ農民の子よ」(1865)や「イエリョームシカの子守歌」(1868)とは趣が全く違っている。ムソルグスキーの歌は子供に歌って聴かせるような優しい曲想で、弱者に共感する視点からの詞が使われている。
この歌は力強い仲間たち五人組の集まりで、歌とピアノをよく演奏したプリゴルド姉妹の妹でリムスキー=コルサコフと結婚したナジェージダに捧げられた。この献呈がリムスキー=コルサコフが五人組(バラキレフ・グループ)からの転向を象徴しているような気がする。