武満徹 Toru Takemitsu (1930-1996)
そしてそれが風であることを知った And then I knew 'twas Wind (1992)
(エミリー・ディキンソン Emily Dickinson(1830-1886))
Like Rain it sounded till it curved |
雨のようにそれは曲がるまで音を立てた |
And then I knew 'twas Wind - |
そしてそれが風であることを知った |
It walked as wet as any Wave |
それは波と同じように湿りながら歩いた |
But swept as dry as sand - |
しかし砂のように乾いて吹き抜けていった |
When it had pushed itself away |
それが遠い平原へと |
To some remotest Plain |
吹き抜けていったとき |
A coming as of Hosts was heard |
主人のようにやってくるのが聞こえた |
That was indeed the Rain - |
それは思ったとおり雨だった |
It filled the Wells, it pleased the Pools |
それは井戸を満たし、水たまりを喜ばせ |
it warbled in the Road - |
道でさえずるように歌った |
It pulled the spigot from the Hills |
それは丘からの蛇口を開き |
And let the Floods abroad - |
洪水を外へもたらした |
It loosened acres, lifted seas |
それは何エーカーも緩め、海を持ち上げた |
The sites of Centers stirred |
真ん中の場所はかき混ざり |
Then like Elijah rode away |
そしてエリアのように飛び去っていった |
Upon a Wheel of Cloud. |
雲の車輪に乗って |
自然の風と、人間の意識の中に吹き続けている、眼に見えない、風のような、魂(無意識の心)の気配を主題としている。
それを「夢」と言っていいかもしれない。(小学館武満徹全集第2巻)
現実世界から離れて
意識の奥底を覗く
微かな風が湧き起こり、
静まり、また湧き起こり
得体の知れないもの、
影のようなものが蠢いている
静寂
風はどこで生まれ、
どこで消えていくのか
意識と無意識
不安と安心
バランスとアンバランス
生と死
明と暗
ミクロとマクロ
すべて…