ブリテン Benjamin Britten (1913~1976)
folksong arrangement
フォギー・フォギー・デュー The Foggy Foggy Dew (from Suffolk)
When I was a bachelor I lived all alone, and worked at the weaver's trade |
ぼくが独身だったとき、いつもひとりぼっちで、織物の商売をしてた |
And the only, only thing that I ever did wrong, was to woo a fair young maid. |
そしてたった一つ、たった一つ悪いことをした、美しい若いメイドに求婚したこと |
I wooed her in the winter time, and in the summer too. |
ぼくは彼女に求婚した、冬のときにね、そして夏にも |
And the only, only thing I did that was wrong, was to keep her from the foggy, foggy dew. |
たった一つ、たった一つ悪いことをした、フォギ・フォギ・デューから彼女を守ったこと |
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One night she came to my bedside when I lay fast asleep. |
ある夜ぐっすり眠っているとき彼女はベッドサイドにやってきた |
She laid her head upon my bed and she began to weep. |
彼女はぼくのベッドに頭を置き、泣き始めた |
She sighed, she cried, she damn' near died, |
ため息をつき、泣いたんだ、とってもひどくね |
she said: "What shall I do?' |
彼女は ”どうしたらいいの” って言った |
So I hauled her into bed and I covered up her head, just to keep her from the foggy, foggy dew. |
ぼくはベッドに彼女を引き入れ、頭まで覆ったやった、フォギ・フォギ・デューから彼女を守るために |
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Oh I am a bachelor and I live with my son, and we work at the weaver's trade |
ああ、ぼくはまた独り身、息子と暮らしてる、織物の商売をして |
And ev'ry single time that I look into his eyes, he reminds me of the fair young maid. |
そして息子の瞳を覗くたびにいつもあの美しい若いメイドを思い出す |
He reminds me of the winter time, and of the summer too, |
あの冬のとき、そしてあの夏のことを |
And of the many, many times that I held her in my arms, just to keep her from the foggy, foggy dew. |
そして何度も何度もぼくの腕に彼女を抱いたことを、フォギ・フォギ・デューから彼女を守るために |
このフォギー・フォギー・デューはイギリスのフォークソングだからその地方の人なら分かりきった内容なのだろうけれど、こちらはタイトルからしてわからない。
そのまま直訳すると霧の霧の露だ。
霧の露から彼女を守ったことがなぜ悪いことなのだろう。
3節ではまた独身になってしまう。
彼女は亡くなったのか、出て行ってしまったのか。そこのことが知りたくて色々探ってみた。
17世紀に印刷されたThe Fright'ned York-shire Damosel(またはFears Dispers'd by Pleasure)というのがこの原曲らしい。
ある男が友人に”バガルマルー”というお化けになってもらい、お目当ての女の子を怖がらせて自分のところに来させ自分のものにするという話らしい。
このバガルマルーbogulmaroo、バガブーbugaboo、ボギー・マンBogie Manといったお化けの名がフォギ・フォギ・デューfoggy foggy dewになったのだろうという。
どことなく発音が似ている。
また、”暗い”や”闇夜”を表すアイルランド語の orocedhu をイングランドの人がフォギ・フォギ・デューと発音を真似たという説や foggy dew が”純潔”を意味しているという説もある。
お化けの計略、つまり彼女を騙したことで結婚できたというので悪いことをしたといっているようだ。
ブリテンの歌詞では暗闇を怖がって男の部屋に駆け込んできたのを利用したことが悪いことと言っているのだろうか。
文字通り”夜霧の露”から彼女を守るためともとれる。
この曲は有名でイギリス南部で広く伝わっているようでその地方で歌詞が少しずつ違う。
違うバージョンの内容を見てみると、この二人は結婚し仲良く暮らすがあるとき彼女は背中に痛みを感じ亡くなってしまう。
そしてこの男はまた独身になってしまう。
子供の瞳が彼女や彼女との日々を思い出させるという内容だ。
後半はちょっと悲しくて泣けてくる。
内容が不道徳だという抗議が来てピアーズとブリテンの録音をBBCが放送禁止にしたこともあったようだ。
楽しくて愛情に満ちていて悲しくて、いい曲だ。