ムソルグスキー Modest Mussorgsky (1839-1881)
死の歌と踊り Songs And Dances Of Death
Lullaby・Serenade・Trepak・The Captain
II セレナーデ Serenade (1875/5/11) 詩:クトゥーゾフ
Boris Christoff 管弦楽版 Nesterenko ピアノ版
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Nega volshebnaya, noch' golubaya, |
神秘的な喜び、青い夜、 |
Trepetniy sumrak vesni...... |
春の薄明のささやき… |
Bnemlet, poniknuv golovkoy, bol'naya...... |
病んだ娘はじっと聞き入る、頭をたれて… |
Shopot nochnoy tishiny. |
夜の静寂のささやきを。 |
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Son ne smikaet blestyaschie ochi, |
眠りは彼女の輝く目を覆うことはなく、 |
Zhizn' k naslazhden'yu zovyot; |
生命は彼女に楽しむように勧める: |
A pod okoshkom v molchan’i polnochi |
しかし真夜中の静けさの中、窓の下で |
Smert' serenadu poyot: |
死がセレナーデを歌うのだ: |
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"V mrake nevoli, surovoy i tesnoy, |
不快で重苦しい、とらわれの身の憂鬱の中で、 |
Molodost' vyanet tvoya: |
おまえの若さはしぼんでいく; |
Ritsar' nevedomiy, siloy chudesnoy |
驚くべき力をもった見知らぬ騎士である |
Osvobozhu ya tebya. |
私がおまえを自由にしてやろう。 |
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Vstan', posmotri na sebya: krasotoyu |
起き上がって自分を見てみるがいい: |
Lik tvoy prozrachniy blestit, |
おまえの透明な顔は美しさで輝いている、 |
Schoki rumyani, volnistoy kosoyu |
おまえの頬はバラ色だ、長く波打つ髪によって |
Stan tvoy, kak tuchey, obvit. |
おまえの体は、あたかも雲に包まれているかのようだ。 |
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Pristal' nikh glaz goluboe siyan'e |
おまえの情熱的なまなざしの青い輝きは |
Yarche nebes i ognya. |
空や火よりもまぶしい。 |
Znoem poludennim veet dikhan'e ...... |
おまえの息は真昼の熱に満ちている… |
Ti obol'stila menya. |
おまえは私を捕らえて放さない。 |
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Slukh tvoy plenilsa moey serenadoy, |
おまえの耳は私のセレナーデの虜になった、 |
Ritsarya shopot tvoy zval. |
おまえのささやき声は騎士を強く求めている。 |
Ritsar'prishol za posledney nagradoy, |
騎士は最後の報酬を求めてやってきたのだ |
Chas upoen'ya nastal. |
歓喜の時がやってきた。 |
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Nezhen tvoy stan, upoitelen trepet. |
震え酔いしれる、おまえの姿はうっとりとさせる。 |
0, zadushu ya tebya v krepkikh ob'yat'yakh, |
おお、私の強い抱擁でおまえの息を止めてやろう; |
Lyubovniy moy lepet, slushay...... molchi...... |
私の愛のささやきを聞け…静まれ… |
Ti moya!" |
おまえは私のものだ! |
(SCHIRMER'S LIBRARY, Vol.2018 MUSSORGSKY Complete Songs HARLOW ROBINSONとレイフェルクス盤の英訳より)
「死の歌と踊り」は当初の計画ではもっと大規模なものだったらしい。
ムッソルグスキーはスタッソフに暗示されたいろいろな主題に基いて、この歌曲集をもつと大規模なものにする計画であつた。すなはち、僧院の鐘の重々しい音を聞きながら密室で死ぬ狂信的な僧侶、送還の途中、郷里を目の前に眺めながら難破して、波に姿を消してしまふ政治的亡命者、熱に浮かされたやうな空想をもつて恋の思い出と青春時代の幻想を追ふ瀕死の婦人、その他いくつかの下書きをしてゐた。
(「ムッソルグスキー」オスカー・フォン・リーゼマン著、服部龍太郎訳、興風館、1942)
また、「ムソルグスキーその作品と生涯」(アビゾワ著、伊集院俊隆訳、新読書社、1993)には、「金持ち」「プロレタリア」「上流夫人」「高官」「皇帝」「若い娘」「百姓」「修道士」「赤ん坊」「商人」「神父」「詩人」の12の部分が考えられていたとある しかし作られ、残ったのは「子守歌」「セレナーデ」「トレパック」「司令官」の4曲のみ。
1874年1月に「ボリス」の初演を行ったが、その人気はまもなく消えていったようだ。しかし、この時偉大な芸術家、当時67歳の歌手オシプ・アファナシエヴィチ・ペトロフと知り合った。ペトロフはこの「ボリス」で、あのワルラームを演じた。この交流からオペラ「ソロチンツィーの市」が誕生することになる。
「死の歌と踊り」①子守歌はペトロフの妻でアルト歌手アンナ・ヤコブレナ・ヴォロービエワ=ペトローヴァに献呈された。②セレナーデは母親のように接してくれたグリンカの妹リュドミラ・イワノブナ・シェスタコワに、③トレパックはこのオシプ・ペトロフに、④司令官は詩人アルセーニイ・アルカディエビチ・ゴレニシチェフ=クトゥーゾフにそれぞれ献呈された。
②セレナーデは、病気にかかった娘のところに死が騎士の姿でやってくる。
春の夜の美しさ静けさをスラーを伴う16分音符で表現する。印象派の響き。
死が訪れ魅惑的なセレナーデを歌い始めてしまう。
ショスタコーヴィチの編曲では、ここから低弦の最期まで続くリズムが始まる。
ああ、逃れられない死の騎士によるその魅惑のセレナーデ!
低弦で表されるリズム、ピアノでは左手の低音で続くそのリズム。
このリズムは少女の心臓の鼓動だ!
とうとう死が命ずる。「静まれ!」
その声と共にリズムはぴたりと止む。
死は勝ち誇ったように、雄たけびをあげる。
この最期のクレッシェンドは鳥肌が立つほど素晴らしく、そして気味悪い。