ストラヴィンスキー Igor Stravinsky (1882-1971)
兵士の物語 L'histoire du Soldat (The Soldier's Tale) (1918)
第1部
00:00 : 兵士の行進
兵士ジョゼフは10日間の休暇をもらい懐かしい故郷へ向かって歩いている。
02:59 : 兵士のヴァイオリン(川のほとりのアリア )
兵士は背負った袋から婚約者の写真を取り出して眺め、やがてヴァイオリンを取り出して弾き始める。
人間に化けた悪魔が登場。ヴァイオリンと未来のことが書いてある本を交換しようと言う。最初は断るが大金持ちになれると言うので交換することにする。
2、3日間の約束で悪魔のところでヴァイオリンを教え、悪魔からは本の読み方を教えてもらう。
09:40 : 兵士の行進
ジョゼフは再び旅に戻りようやく故郷に着く。だが、知人や友人に声をかけても反応がない。母親は幽霊扱いして逃げていくばかり。恋人はすでに結婚して二人の子供がいる。悪魔の3日は実は3年であったと気づく。
13:51 : パストラル
悪魔が再び登場。ジョゼフは悪魔に飛びかかろうとするが号令をかけられ言いなりになる。悪魔はジョゼフに本を使うように命じる。
17:32 : パストラル 繰り返し
ジョゼフは本を読み、物売りになって儲ける。「とれるものは何でもまきあげろ。人間いつか死ぬんだ。生きているうちにいい目を見なくちゃ。」大金持ちになった。しかし、金はすべてではない。ヴァイオリンと共に自分の本当にいいものを失ってしまった。
20:24 : 兵士のヴァイオリン(川のほとりのアリア )
ジョゼフは昔を思い出す。優しい彼女の微笑みや温かい人々の善意を。「誇りがほしい。俺には金があるだけだ。生きた幽霊にすぎない。」昔に戻る秘密を求めて本を読み返す。
物売りの老婆に化けた悪魔登場。老婆はいろいろ売りつけようとするが何もいらない。中に兵士の背のうとヴァイオリンがあった。「これを知ってますか。この小さなヴァイオリンを」兵士は惹きつけられる。「いくらだ。」「弾いてごらんなさい。」
24:13 : 兵士のヴァイオリン(川のほとりのアリア ) 繰り返し
ジョゼフはヴァイオリンをとりあげて弾いてみるが全く音が出ない。腹を立ててヴァイオリンを投げつける。そして本を読み直すがやがて引き裂いてしまう。
第2部
25:14 : 兵士の行進
金はあっても空虚な生活の惨めさに絶えきれずジョゼフは全てを投げ打って旅に出る。どこにも泊まることができない。誰も彼を知らない。彼の顔を見ると皆逃げ出した。
とある国境の村に来ると酒場で王様のおふれを聞く。王様の娘は眠りもせず、食べもせず、話しもしないという奇病で床に伏している。病気を治したものは王女と結婚できるというものだった。「よし、王様に会いに行こう。」ジェゼフは叫ぶ。
29:03 : 王の行進曲
兵士は王宮を訪れ、軍医だと自己紹介し「今晩は宮廷に泊まり、明日皇女を治して差し上げましょう。」と自信たっぷりに語る。そして王宮の控えの間で、トランプで一人占いを始める。
大ヴァオリニストに変身した悪魔が登場。語り手が、呪われた生活と引き換えに貯めた金を悪魔に返してしまえば自由が得られると兵士に語りかけ、悪魔と賭けトランプをするように仕向ける。上機嫌で酒を飲みながら勝ち続けた悪魔は魔力を失っていき、ジョゼフが最後の金を失うと悪魔は椅子に突っ伏してしまう。彼はヴァイオリンをとりあげ弾き始める。それは元のように音が出るようになり、悪魔は床に倒れる。
35:31 : 小さいコンサート
ジョゼフは王女の部屋でヴァイオリンを弾き始める。
39:02 : 3つの舞曲 タンゴ
41:10 : 3つの舞曲 ワルツ
43:10 : 3つの舞曲 ラグタイム
王女はゆっくりと起き出し、寝床を出て兵士と踊り始める。
45:32 : 悪魔の踊り
抱擁する王女と兵士の前に、四つんばいの悪魔が現れヴァイオリンを引ったくろうとする。ジョゼフが再びヴァイオリンを弾くと悪魔は激しく踊り狂い回っているうちに倒れてしまう。
46:59 : 小さなコラール
王女と兵士は悪魔の足を引っ張り運び去り、喜びの抱擁をする。
47:39 : 悪魔の歌
悪魔は舞台裏から頭だけ突き出し呪いの言葉を投げつける。
「今度はそっちに運がついた。だが国境をこえようとする者は、再び私に捕えられ、そいつの運命は前よりひどいものになる。だから許されないことをしない方が良い。さもなくば王女をまたベッドに置いておくかだ。この私の魔力を怒らせるようなことするようなら、目にもの見せてくれる。」
悪魔が消えても二人は抱擁したまま。
48:22 : 大きなコラール
語り手は語る。兵士はヴァイオリンに象徴された善を手放し金持ちになったが不幸な結果となった。第2の人生の呪いの種となった金を全て悪魔に戻し、自由とロマンスを手に入れた。
今彼は禁断のモラルをなすべきかの瀬戸際に立っている。新たに得た新しい幸福と懐かしい故郷での失われた青春の幸福を一つにしたいと。
「すべてのものを所有することは誰にもできない。あなたは選ぶことを知らなければならない。ひとつの幸福こそすべてではないか。しかしふたつの幸福を同時に得ようとする者はその両方を失うことになる。」
しかし兵士の心は止めようもなかった。彼は王女を連れ故郷に帰ろうとする。国境に差し掛かると悪魔が現れ、手にしたヴァイオリンを弾き始める。
53:25 : 悪魔の勝利の行進曲
兵士は魔法にかけられたように悪魔の方に向かう。反対側から声がすると立ち止まり、振り向くが、また悪魔の方に向かう。もういちど声がするが、もう止まることはない。舞台は無人となって終わる。
(ストコフスキーのLP解説を参考にした)
Cast
Narrator: Steven Goldstein
Soldier: Nile Hawver
Devil: Josh Quinn
Princess: Kristin Wagner
Music
Violin: Paul Biss
Double Bass: Donald Palma
Clarinet: Michael Wayne
Bassoon: Richard Ranti
Cornet: Mark Emery
Trombone: Gabriel Langfur
Percussion: Robert Schulz
バレエと違ってナレーションと3人のパントマイム的パフォーマンス。
あることが手に入ると次もとつい欲が出る。
わかっちゃいるけどやめられない。
悪魔の誘いはどこにでもある。
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diary 2023-8-9 (水) 月齢22.3 曇り・雷・雨
ストラヴィンスキーの兵士の物語をアップ。
音楽を伴ったパントマイム的劇だ。
人間つい欲が出てもうひとつ欲しくなり破滅に陥る。
笑ゥせぇるすまんが出てきて人間こんなもんですよ〜ん、ウォーッホッホッホッホと言っているようだ。
王の行進曲のコルネットが楽しい。