シューベルト 8 かえりみ 冬の旅 Rückblick Winterreise / Schubert

シューベルト Franz Schubert (1797-1828)

8. かえりみ / 冬の旅 Rückblick / Winterreise

 

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1. 冬の旅 8 かえりみ Rückblick

play 1·2·3·4·5

001 Ian Bostridge, Thomas Adès

002 Dietrich Fischer-Dieskau, Gerald Moore

003 Hans Hotter, Michael Raucheisen

004 Gerhard Hüsch, Hanns Udo Müller

005 Christoph Prégardien, Michael Gees

006 Crista Ludwig, Eric Werba

007 Hans Duhan, Ferdinand Foll

008 Ian Bostridge, Jurius Drake (2015)

 

 

 

8 かえりみ Rückblick

Es brennt mir unter beiden Sohlen, 

ぼくの両足の裏は燃えるように熱い

Tret' ich auch schon auf Eis und Schnee, 

氷と雪の上を歩いているけれど

Ich möcht' nicht wieder Atem holen, 

ひと息したいとはもう思わない

Bis ich nicht mehr die Türme seh'.

町がもう見えなくなるまで

 

 

Hab' mich an jeden Stein gestossen, 

ぼくは石ごとにつまずいた

So eilt' ich zu der Stadt hinaus;

町を離れようと急いでいたから

Die Krähen warfen Bäll' und Schlossen 

カラスが雪つぶてや雹を投げつけた

Auf meinen Hut von jedem Haus.

ぼくの帽子めがけてどの家からも

 

 

Wie anders hast du mich empfangen, 

おまえはなんて変わってしまったのだ

Du Stadt der Unbeständigkeit!

不誠実な町よ

An deinen blanken Fenstern sangen 

おまえの輝く窓辺で

Die Lerch' und Nachtigall im Streit.

ひばりと夜鳴き鶯が競って鳴いていたのに

 

 

Die runden Lindenbäume blühten, 

こんもりした菩提樹は花をつけ

Die klaren Rinnen rauschten hell, 

澄んだ流れは明るく音を立てていたのに

Und ach, zwei Mädchenaugen glühten! - 

そして、ああ、娘の二つの目は輝いていた

Da war's geschehn um dich, Gesell!

友よ、おまえの運命はそこで決まったのだった

 

 

Kommt mir der Tag in die Gedanken, 

あの日のことが心をよぎると

Möcht' ich noch einmal rückwärts sehn, 

もう一度ふりかえりたくなる

Möcht' ich zurücke wieder wanken, 

よろめきながら戻って

Vor ihrem Hause stille stehn.

彼女の家の前に立ちたくなる

(ヒュペリオンのシューベルト歌曲全集の英訳による)

 

 

イアン・ボストリッジの著書『シューベルトの「冬の旅」』(2017年、アルテスパブリッシング発行、岡本時子+岡本順治 訳)の「8 かえりみ」の章を読む。ここの本文は2ページしかない。オルフェウスがふりかえって妻を見てしまったために、冥府につながる洞窟に吸い込まれていくエウリュディケの絵がその後に掲げられている。

 

『この歌には「あまり速くなく(Nicht zu geschwind)」と記されているものの、いつもそうなのだが、これは「速く」の意味なのだ。』

『教会を思わせる古風な和声とともにこのツィクルスに描かれる最初の大きな弧は終わりを告げる。次の曲は私たちを別世界へといざなう。』

 

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この曲も「菩提樹」から「春の夢」の間にあって詩の内容があまり印象に残らない。旅人はなかなか恋人を忘れられない。24曲にわたってこの調子だ。前を見ろと言いたいが旅人に付き添っていくしかない。雪つぶてや雹を投げるカラスは死の世界からの追い討ちともとれる。

 

ミュラーの詩は偶数行どうし、奇数行どうしが見事に韻を踏んでいる。あの頃の思い出はふっと長調に変わる、なんと見事。ルートヴィヒとドゥハンがまたいいんだなあ。涙が出そうだ。

ボストリッジの本の8章に採り上げられた曲はなかった。

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「冬の旅」の調

自筆譜

1. おやすみ Gute Nacht

ニ短調

2. 風見の旗 Die Wetterfahne

イ短調

3. 凍った涙 Gefror'ne Thränen

ヘ短調

4. 氷結 Erstarrung

ハ短調

5. 菩提樹 Der Lindenbaum

ホ長調

6. 溢れる涙 Wasserfluth

嬰ヘ短調 → ホ短調

7. 川の上で Auf dem Flusse

ホ短調

8. 回想 Rückblick

ト短調

9. 鬼火 Irrlicht

ロ短調

10. 休息 Rast

ニ短調 → ハ短調

11. 春の夢 Frühlingstraum

イ長調

12. 孤独 Einsamkeit

ニ短調 → ロ短調

13. 郵便馬車 Die Post

変ホ長調

14. 霜おく頭 Der greise Kopf

ハ短調

15. 烏 Die Krähe

ハ短調

16. 最後の希望 Letzte Hoffnung

変ホ長調

17. 村にて Im Dorfe

ニ長調

18. 嵐の朝 Der stürmische Morgen

ニ短調

19. まぼろし Täuschung

イ長調

20. 道しるべ Der Wegweiser

ト短調

21. 宿屋 Das Wirthshaus

ヘ長調

22. 勇気 Mut

イ短調

23. 幻の太陽 Die Nebensonnen

イ長調

24. 辻音楽師 Der Leierman

ロ短調 → イ短調

 

 

 

  年表   close 

社会状況

ミュラー

シューベルト

1789

フランス革命

 

 

1794

 

10/7ドイツ、侯国アンハルト・デッサウに仕立職人の家に生まれる

 

1797

 

 

1/31ヴィーン、リヒテンタールに教師の家に生まれる

1800

ベートーヴェン交響曲1番

6歳、ハウプトシューレ入学

 

1804

ナポレオン、皇帝に即位ベートーヴェン交響曲3番

 

 

1805

アウステルリッツ三帝会戦でオーストリア・ロシアがナポレオン軍に敗れる、ウィーン占領

 

 

1807

侯国アンハルト・デッサウ、ライン同盟に加わりフランスに従属

 

 

1808

ベートーヴェン交響曲第5番

14歳、母没

11歳、ヴィーン宮廷少年合唱団に入団、寄宿学校コンヴィクトに入学、寮のオーケストラに参加

1809

ナポレオン再びウィーン占領ハイドン没

15歳、父再婚

 

1810

 

 

13歳、初めて4手のピアノのための幻想曲作曲

1812

ナポレオン、ロシアで敗退。プロイセンでフランス占領軍に対する解放戦争始まる

18歳、ベルリン大学入学

15歳、宮廷楽長サリエリに作曲を習い始める、母没

1813

ライプツィヒでフランス軍敗れる。ウーラント「さすらい人の歌」出版

19歳、解放戦争の志願兵になる、グロースゲルシェンの戦い、パウツェンの戦い、クルムの戦い、プラハ、オランダ、ブリュッセルへ

16歳、コンヴィクト終了、王室普通上級学校で教員養成所に通う、父再婚

1814

ナポレオン退位エルバ島追放王政復古。ウィーン会議開始

20歳、ブリュッセルでユダヤ人既婚者と推定されるテレーゼと恋愛、ベルリンに戻る。

17歳、普通上級学校卒業。父親の勤める学校の助教員になる「糸を紡ぐグレートヒェン」「ミサ曲D105」をテレーゼ・グローブ歌う

1815

ナポレオン、エルバ島脱出ワーテルローの戦いで敗北、セントヘレナ島流刑、ウィーン会議終結

21歳、大学生活再開、友人の妹ルイーゼ・ヘンゼルと交際、古典文献学、ゲルマン研究に専念。

18歳、「野ばら」「魔王」

1816

 

22歳、ブレンターノの出現でルイーゼに失恋、シュテーゲマン家で劇「美しき水車屋の娘」演じる5篇

19歳、サリエリの証明書をつけてライバッハの音楽教師のポストに求職するが失敗「万霊節の連祷」「竪琴弾きの歌」「さすらい人」

1817

 

23歳、男爵ザックの研究旅行に随伴。ウェーバー訪問、ギリシャへ行く予定がペスト流行で中止となりイタリアへ向かう。男爵と決別。

20歳、フォーグルを紹介される「死と乙女」「ます」「楽に寄す」

1818

 

24歳、ローマ、フィレンツェ、ヴェローナ、ミュンヘン、ドレスデンに戻る。

21歳、ロッサウ転居。以降両親の生活から離反、エステルハージ家のレッスンに招聘される「軍隊行進曲」

1819

カールスバート決議で自由主義・国民主義の抑圧・検閲

25歳、大学を正式に卒業していないため、デッサウの代用教員になり、副業で図書館員となる。

22歳、「プロメテウス」「ピアノ五重奏ます」

1820

 

26歳、「ローマ・ローマ人」全2巻を出版。世に知られる。父没。「旅する角笛吹きの遺稿より77の詩」出版(美しき水車屋の娘全25篇を含む)

23歳、友人のゼンとともに一時逮捕される「ラザルス」「魔法の竪琴」

1821

オスマントルコに占領されていたギリシャが独立戦争を始める。ウェーバー魔弾の射手

27歳、5月デッサウの参事官バゼドウの娘アーデルハイトと結婚。10月「ギリシャ人の歌」出版。ギリシャを讃える。「ロード・バイロン」「永遠のユダヤ人」「冬の旅」執筆

24歳、シューベルティアーデ始まる「ズライカ」「ミニョン」

1822

 

「ギリシャ人の歌」第2巻出版「新ギリシャ人の歌」

25歳、ヴェーバーとヴィーンで面会。病気に感染「僕の夢」「未完成」「さすらい人幻想曲」

1823

ベートーヴェンミサソレムニス

29歳、「冬の旅」第1部出版。

26歳、数日間総合病院に入院。「夜と夢」「美しき水車屋の娘」「ロザムンデ」

1824

バイロン、ギリシャで病死

30歳、「冬の旅」第2部を含む完成版出版。宮廷顧問官に任命される。

27歳、エステルハージ家の音楽教師に、「夕映に」「弦楽四重奏曲ロザムンデ」「弦楽四重奏曲死と乙女」「八重奏曲」

1825

 

 

28歳、フォーグルとオーストリア州旅行「若き尼」

1826

ウェーバー没

32歳、百日咳にかかる、ジモリンとフランツェンスパートに湯治、デッサウ劇場監督に「13番目」ウラニアに掲載

29歳、宮廷副楽長とケルンテン門劇場の副指揮者に応募するがどちらも失敗、「春に」「シルビアに」「弦楽四重奏曲15番」

1827

ベートーヴェン没

33歳、心気症のようなもので苦しむ、南西ドイツ旅行。ケルナー、ウーラントを訪問。ミュラー作品の出版をするシュヴァープと面会。冷淡なゲーテと面会。10/1死亡、小説「デボラ」ウラニアに掲載

30歳、4月「冬の旅」第1部を見つけ作曲始める。10月第2部を見つけ作曲開始。「即興曲」「ドイツ・ミサ曲D872」

1828

 

 

31歳、「冬の旅」第1部楽譜出版。兄フェルディナントの家に同居。11/19死亡。12月第2部楽譜出版。「ミサ曲D950」「弦楽五重奏曲」「3大ピアノソナタ」「交響曲グレート」「白鳥の歌」

 

 

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@ Schubert  

「冬の旅」について

記録(1)記録(2)記録(3)記録(4)記録(5)記録(6)

ヴィルヘルム・ミュラーとシューベルト 年表 Wilhelm Müller, Franz Schubert, chronological table

1 おやすみ 冬の旅 Gute Nacht Winterreise / Schubert

2 風見 冬の旅 Wetterfahne Winterreise / Schubert

3 凍った涙 冬の旅 Gefrorne Tränen Winterreise / Schubert

4 凍結 冬の旅 Erstarrung Winterreise / Schubert

5 菩提樹 冬の旅 Der Lindenbaum Winterreise / Schubert

6 あふれ流れる水 冬の旅 Winterreise / Schubert

7 流れの上で 冬の旅 Auf dem Flusse Winterreise / Schubert

8 かえりみ 冬の旅 Rückblick Winterreise / Schubert

9 鬼火 冬の旅 Irrlicht Winterreise / Schubert

10 休息 冬の旅 Rast Winterreise / Schubert

11 春の夢 冬の旅 Frühlingstraum Winterreise / Schubert

12 孤独 冬の旅 Einsamkeit Winterreise / Schubert

13 郵便馬車 冬の旅 Die Post Winterreise / Schubert

14 霜雪の頭 冬の旅 Der greise Kopf Winterreise / Schubert

15 カラス 冬の旅 Die Krähe Winterreise / Schubert

16 最後の希み 冬の旅 Letzte Hoffnung Winterreise / Schubert

17 村で 冬の旅 Im Dorfe Winterreise / Schubert

18 嵐の朝 冬の旅 Der stürmische Morgen Winterreise / Schubert

19 惑わし 冬の旅 Täuschung Winterreise / Schubert

20 道しるべ 冬の旅 Der Wegweiser Winterreise / Schubert

21 宿屋 冬の旅 Das Wirtshaus Winterreise / Schubert

冬の旅 宿屋の3つの演奏パターン

22 勇気 冬の旅 Mut Winterreise / Schubert

23 幻日 冬の旅 Die Nebensonnen Winterreise / Schubert

24 ライアー回し 冬の旅 Der Leiermann Winterreise / Schubert

シューベルト 歌曲全集 ディスカウ Alle Lieder / Schubert

シューベルト 歌曲全集2 Lieder / Schubert

ピアノソナタ全集 Piano Sonatas / Schubert

弦楽四重奏曲全集 String Quartets / Schubert

弦楽五重奏曲 String Quintet D956 / Schubert

至福 Seligkeit D433 / Schubert

死と乙女 Der Tod und das Mädchen D531 / Schubert

音楽に An die Musik D547 / Schubert

夜と夢 Nacht und Träume D827 / Schubert

春に Im Frühling D882 / Schubert

弦楽四重奏曲第15番 String Quartet 15 D887 / Schubert

ピアノソナタD960 Piano Sonata D960 / Schubert

 

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diary 2024-2-24(金) 月齢14.2満月 晴れ
リリングのバッハ・カンタータBWV 31、無伴奏ヴァイオリンソナタとパルティータをグリュミオーで聴く。
トラブルスピーカーKEF LS50 Wireless II は今日は正常に聞けた。
今日も寒い。久しぶりに公園へ行った。紅梅の方はほとんど花が散っていた。暖かかった日には亀が5匹甲羅干しをしていたのに今日はまた姿が見えない。雲のない真っ暗な空に満月が強い光を放っている。グリュミオーのヴァイオリンが沁みる。
「冬の旅 8 かえりみ」をアップした。

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