シューベルト Franz Schubert (1797-1828)
春に Im Frühling, D. 882 エルンスト・シュルツェ Ernst Schulze (1789-1817)
Heinrich Schlusnus, tenor Sebastian Peschko, piano (1940)
Still sitz ich an des Hügels Hang, |
丘の斜面に静かに座っていると |
Der Himmel ist so klar, |
空は晴れて |
Das Lüftchen spielt im grünen Tal, |
そよ風が緑の谷を遊んでいる |
Wo ich beim ersten Frühlingsstrahl |
かつて春の初めての光がさしたころ |
Einst, ach so glücklich war; |
ああ、とても幸せだった |
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Wo ich an ihrer Seite ging |
そこを彼女と並んで歩いたのだ |
So traulich und so nah, |
なんと和やかに、寄り添って、 |
Und tief im dunklen Felsenquell |
暗い岩のある流れを見入ったものだ |
Den schönen Himmel blau und hell |
青く輝く美しい空と、 |
Und sie im Himmel sah. |
その空に映える彼女の姿を |
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Sieh, wie der bunte Frühling schon |
なんと色とりどりの春なのか見てごらん |
Aus Knosp' und Blüte blickt! |
つぼみや花が顔を出している! |
Nicht alle Blüten sind mir gleich, |
すべての花が同じというわけでない |
Am liebsten pflückt ich von dem Zweig, |
枝から花を摘みとるのが好きだった |
Von welchem sie gespflückt! |
とりわけ彼女の摘みとった枝から! |
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Denn alles ist wie damals noch, |
すべてがあの時と同じまま、 |
Die Blumen, das Gefild; |
花も、野原も |
Die Sonne scheint nicht minder hell, |
太陽も変わらず明るく輝き、 |
Nicht minder freundlich schwimmt im Quell |
何も変わらず心地よく |
Das blaue Himmelsbild. |
映った空の青が小川で水浴びしている |
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Es wandeln nur sich Will und Wahn, |
心と惑いだけが変わってしまう |
Es wechseln Lust und Streit, |
歓びと苦悩が入れかわり |
Vorüper flieht der Liebe Glück, |
愛の幸福は飛び去ってしまった |
Und nur die Liebe bleibt zurück, |
そして愛だけが残っている |
Die Lieb und ach, das Leid. |
愛と、ああ、悲しみが! |
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O wär ich doch ein Vöglein nur |
ああ、私が鳥であったなら |
Dort an dem Wiesenhang, |
なだらかな草地のそこで! |
Dann blieb ich auf den Zweigen hier |
そしてここの枝にとまって |
Und säng ein süßes Lied von ihr |
優しく彼女の歌を歌うだろうに |
Den ganzen Sommer lang. |
夏の間中ずっと |
素晴らしい春の日、
遠く幸せだった日を想う。
痛みをもって。
恋人が去っていった状況は冬の旅と似ているが、
こちらの方が重くなく明るい曲想で親しみやすい。
何よりピアノのアルペジオがとても印象的。
昔の歌手の歌もいいものだ。
ユリウス・パツァーク、アントン・デルモータ、
ハンス・ドゥハン、ロッテ・レーマン、ゲルハルト・ヒュッシュ、
エレーナ・ゲルハルト、レオ・スレザーク
何かとても人懐っこくて人間味にあふれている。
ハインリヒ・シュルスヌスの歌で。
ちょっぴり哀しいのに爽やかで懐かしくってね。
シュターダー&カペル
シュワルツコップ&フィッシャー
デラ・カーザ&サンダー
ゲルハーヘル&フーバー
ボストリッジ&ドレイク