ラヴェル Maurice Ravel (1875-1937)
聖女 Sainte M9 (1896)
(text: ステファヌ・マラルメ Stéphane Mallarmé 1842-1898)
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聖女
A la fenêtre recélant |
窓のところ、窓が隠しているのは |
Le santal vieux qui se dédore |
古い金箔の剥がれかけた白檀 |
De sa viole étincelant |
輝いていた彼女のヴィオールの |
Jadis avec flûte ou mandore, |
かつてはフルートやマンドーラと共に |
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Est la Sainte pâle, étalant |
青白い聖女がいる、広げながら |
Le livre vieux qui se déplie |
開いた古い書物を |
Du Magnificat ruisselant |
輝き流れていたマニフィカートの |
Jadis selon vêpres et complie: |
かつての夕べの祈りや終禱のための |
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A ce vitrage d'ostensoir |
この聖体顕示台のガラスのところで |
Que frôle une harpe par l'Ange |
天使のハープに触れられ |
Formée avec son vol du soir |
夕べの飛行とともに作られ |
Pour la délicate phalange |
繊細な指の関節のために |
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Du doigt que, sans le vieux santal |
その指を、古い白檀も |
Ni le vieux livre, elle balance |
古い書物もなしに、彼女は揺らす |
Sur le plumage instrumental, |
楽器の羽根の上で |
Musicienne du silence. |
沈黙の音楽家よ |
( Masters of the French Art Song by Timothy Le Van、EMIラヴェル歌曲全集LPの英訳から)
この詩もよくわからないのでいろいろ調べてみた。窓辺にいる聖女は教会のステンドグラスに描かれた聖セシリアを表しているようだ。聖セシリアは音楽家と盲人の守護聖人という。
そのステンドグラスには、かつては白檀で作られたヴィオールやフルート、マンドリンの前身のマンドーラも描かれてあったが金箔も剥がれ消えかかっている。
彼女はかつて歌われていたマニフィカートや礼拝の言葉の書かれた書物を持っている。
第3節では聖体顕示台に窓からの光がさしていると考えると聖体顕示台の中央のガラスにもう一人の聖女を思い浮かべなければならなくなる。聖体顕示台は聖体を納めた中央のガラスを中心に太陽の光のように装飾されている祭器とのこと。それよりも聖体顕示台は教会を象徴していて、このステンドグラスを指していると考えると夕方の陽の光がステンドグラスに差して、その光が天使のハープを形作り飛行しているととらえることができる。
その光は羽根の上に音楽を奏でさせる。羽根ペンつまり詩を生み出すということだろうか。
この教会はもう使われなくなり朽ちて過去の遺物となってしまったのだろうか。時間が止まったような静寂の中、美しい色彩をもった沈黙の響きが降り注いでいるのを想像する。
ラヴェルの曲はサティの影響を受けているという意見があるということなので、サティの1886年の3つのメロディを改めて聴き返す。なるほど雰囲気がとてもよく似ている。
ラヴェルの曲は第3節で光の天使のハープを象徴するかのようにピアノに煌めくような音が散りばめられる。落ち着いていてとても美しい曲だ。ダムはもちろん、エルビヨンやスゼー、アメリング、モレ、クリュイセン、アラリー、ブノワらも録音を残していて聴きごたえがある。
参考にしたサイト
→ ボエム・ギャラント「マラルメ 聖女」 mallarme-sainte
→ 『聖 女』 論COREhttps://core.ac.uk › download › pdf
→ マラルメにおける「時の流れ」と「現在」1 )gallia.jphttp://www.gallia.jp › texte
ラヴェル年表 close
ラヴェル年表と歌曲
1875(0歳) |
3月7日、モーリス・ラヴェル、バス=ビレネ県のシブール村に生まれる。間もなくパリに引っ越す。 |
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1882(7歳) |
ギスのもとでピアノの勉強を始める。 |
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1887(12歳) |
ルネに和声を学ぶ。 |
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1889(14歳) |
パリ音楽院のピアノ準備クラスに入る。パリ万国博を見る。 |
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1893(18歳) |
最初の作曲。 |
愛に死せる王女のためのバラードM4(ロラン・ド・マレ詩、独唱、Pf) |
1895(20歳) |
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暗く果てしない眠りM6(ポール・ヴェルレーヌ詩、独唱、Pf) |
1896(21歳) |
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聖女M9(ステファヌ・マラルメ詩、独唱、Pf) スピネットを弾くアンヌのことM10(クレマン・マロの2つのエピグラム 2、独唱、Pf) |
1898(23歲) |
ジェルダジュの対位法のクラスとフォーレの作曲クラスに入る。最初の出版(<古風なメヌエット>) |
紡ぎ車の歌M15(ルコント・ド・リール詩、独唱、Pf) 何とも打ち沈んだM16(エミール・ヴェラレン詩、独唱、Pf) |
1899(24歳) |
<シェエラザード>序曲の初演で指揮をする。 |
私に雪を投げつけたアンヌのことM21(クレマン・マロの2つのエピグラム I、独唱、Pf) 逝ける王女のためのパヴァヌM19(Pf, Orch 編曲) |
1900(25歲) |
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舞姫M25(S 独唱,混声Cho,Orch) あらゆるものが輝いているM28(S独唱,混声Cho,Orch) |
1901(26歲) |
ローマ大賞に応募するが第2位に終わる。<水の戯れ>作曲。 |
カンタータ<ミルラ>M29(3声の独唱,Orch) |
1902(27歳) |
ローマ大賞に再度応募するが落選。<弦楽四重奏曲>作曲(1903完成)。 |
夜M33(S 独唱,混声Cho,Orch) |
1903(28歳) |
ローマ大賞に4度目の挑戦も失敗。歌曲集<シェエラザード>作曲。 |
プロヴァンスの朝M37(S独唱,混声 Cho,Orch) 花のマントM39(ポール・グラヴォレ詩、独唱,PI) 歌曲集<シェエラザード>M41(3曲,トリスタン・クリングゾル詩) |
1904(29歳) |
私立学校の教師になる。 |
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1905(30歳) |
ローマ大賞に最後の応募をするが予選で作品を拒絶され物議をかもす(いわゆるラヴェル事件)。ヨットでヨーロッパ各地を旅行。 |
鏡M43(5曲、Pf) 朝M45(T独唱,混声 Cho,Orch)
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1906(31歳) |
<博物誌> 作曲。 |
おもちゃのクリスマスM47(ラヴェル詩、独唱、Pf) 風は海からM48(アンリ・ド・レエニ詩、独唱、Pf) 博物誌M50(5曲,ジュール・ルナール詩、独唱,Pf) 5つのギリシア民謡A4-8(M.D.カルヴォコレッシ訳,独唱,Pf) |
1907(32歳) |
歌劇<スペインの時>作曲(1909完成)。 |
ハバネラ形式のヴォカリーズ M51(独唱、Pf) 草の上でM53(ポール・ヴェルレーヌ詩、独唱、Pf) |
1908(33歳) |
父死去。ディアギレフと会う。くスペイン狂詩曲),<夜のガスパール>完成。 |
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1909(34歳) |
ディアギレフに<ダフニスとクロエ)の作曲を依頼される。 |
ギリシア民謡くトリパトス)A13(独唱、Pf) スコットランドの歌A12(ロバート・バーンズ詩、独唱、Pf) |
1910(35歳) |
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民謡集A17(4曲作詩者不詳、独唱。Pf) |
1911(36歳) |
歌劇<スペインの時>初演。<高貴で感傷的な円舞曲>作曲。初演。 |
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1912(37歳) |
バレエ<ダフニスとクロエ>初演。 |
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1913(38歳) |
ストラヴィンスキーとムソルグスキーの歌劇<ホヴァンシチーナ>のオーケストレーションをする。<ステファヌ・マラルメの3つの詩>作曲、初演。 |
ステファヌ・マラルメの3つの詩M64(独唱、室内アンサンブル、Pf) |
1914(39歳) |
第一次世界大戦勃発,軍隊入りを志願する。<ピアノ三重奏曲>作曲。 |
2つのへブライの歌A22(作者不詳、独唱,Pf,Orch 伴奏用編曲) |
1915(40歳) |
軍隊に入隊する。 |
3つの歌M69(3曲,ラヴェル詩、無伴奏混声 Cho) |
1917(42歳) |
母死去。軍隊を除隊する。くクープランの墓>完成。 |
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1918(43歳) |
パリ西南部のサン゠クルーに引っ越す。 |
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1919(44歳) |
第一次世界大戦終る。 |
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1920(45歳) |
<ラ・ヴァルス>完成。 |
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1921(46歳) |
パリ西南に位置するモンフォール=ラモリに引っ越す。 |
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1922(47歳) |
<ヴァイオリンとチェロのためのソナタ>作曲,初演。ムソルグスキーの組曲<展覧会の絵>を編曲する。 |
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1924(49歳) |
<ツィガーヌ>作曲,初演。 |
ロンサールここに眠るM75(ロンサール詩、独唱、Pf) |
1925(50歳) |
歌劇<子供と魔法>作曲,初演。 |
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1926(51歳) |
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マダガスカル島人の歌M78(3曲,E.パルニ訳,独唱。FL,Vc, PI) |
1927(52歳) |
<ヴァイオリンとピアノのためのソナタ>作曲。アメリカ旅行に出かける。 |
夢M79(レオン=ポール・ファルグ詩、独唱、Pf) |
1928(53歳) |
<ボレロ>作曲,初演。 |
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1931(56歳) |
<左手のためのピアノ協奏曲 二長調>初演。 |
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1932(57歲) |
<ピアノ協奏曲ト長調>初演。交通事故に遇う。 |
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1933(58歳) |
最後の作品<ドゥルシネア姫に心を寄せるドン・キホーテ>完成。脳の障害があらわれ始める。 |
ドゥルシネア姫に心を寄せるドン・キホーテM84(3曲、P.モラン詩、Br 独唱,Orch) |
1934(59歲) |
レマン湖畔のモン=ベルランに療養に出かける。 |
ドゥルシネア姫に心を寄せるドン・キホーテM84b(Pf 伴奏用編曲) |
1935(60歳) |
スペインから北アフリカへ旅行する。 |
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1937 (62歳) |
パリで脳の手術を受けるも、12月28日死去。2日後ルヴァロワの墓地に埋葬される。 |
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(音楽乃友社、作曲家別名曲解説ライブラリー11「ラヴェル」とウィキペディア「ラヴェル楽曲一覧」を参考にした)
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diary 2024-11-25(月) 月齢 23.6 晴れ
スズキのバッハ・カンタータBWV 192、197、157、120a、シューベルト・夜と夢をランダムで30人聴く。ラヴェルの「聖女」をアップ。落ち着いたいい曲だ。エルビヨン、スゼー、ブノワ、モレ、クリュイセン、どの歌手もすばらしい。
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